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【クォンタム・グルーヴ】vol.2 ‒ DJ KATIE SE7EN が様々な国での多様な経験と独自のクォンタム哲学で、雑然と変わりゆく世界を自分らしく見つめてゆく連載エッセイ。
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2019.04.23
三寒四温。
七転八起。
前者は3日寒い日があったら4日暖かい日があり、だんだんと春に近づいてゆくという意味で使われる。
後者は何度転んでも立ち上がるという意味で使われる。
わたしはどちらも前に進むという意味で捉えている。
前に進む。ただそれだけをいつも考えている。わたしは自分を高めていくことに執着がある。
子供の頃、朝早く起きて父と母にトーストを用意していた時期があった。4歳くらいだったと思う。パンをトースターに入れてセットし、焼けたらお皿に乗せる。バターやジャムなどには気が回らず、こんがり焼けたトーストだけ。
その朝、トーストを用意して待っていても、母は起きてこなかった。寝室を覗きにいったが、父の背中しか見えなかった。
「お母さんはどこに行ったの?」
「お母さんはお仕事だよ。」
起きてきた父はそれ以上は言わず、わたしはおばあちゃんの家へ連れて行かれた。車のバックシートの窓から外を眺めていたのを覚えている。
突然いなくなった母について、幼稚園では「お母さんは星になったんだ」と説明した。
小学生になって、母の事をたまに思い出すと、彼女はフワフワの赤みのあるくせ毛をした綺麗な人だった。そして、その人はわたしを見捨てたのだと思うようになっていた。
子供にとって、親は初めて人間関係を築く相手であり、子供の限られた世界の中では、親からの承認の意味は大きい。それを得られなかった事が、わたしの全ての原動力となったと思う。見て?見て?わたしこんなこともあんなこともできるんだよ!と。
承認欲求は自分を高める原動力になったが、その一方で、わたしは人との繋がり方が分からずに苦しんだ。どんな人からも愛情を求め過ぎるせいで、友達も恋愛も長続きしなかっ た。
人は忘れがちだ。生まれた時、周りの人たちはあなたが健康に生まれてきた、ただそれだけで喜び祝ったのだということを。
資本主義のもと、現代人の人生は楽ではない。ただ生きていく、それだけでも大変だ。だからあなたは、わたしは、十分なのだ。生きているだけで。前を向いて一歩ずつ進んでゆく。それだけで賞賛に値するのだ。それに気づいてからは、人からの承認を求めて生きるのではなく、自分が自分を認め、愛してあげるようになった。そうして、自分が自分であることを承認することが当たり前の事実になってくると、面白いことに、周りの人たちも同じようにあなたを承認し、愛してくれる。
人生はどんどん加速していく。
長いようで短い。
誰かからの承認を、
待っている時間などないのだ。
●Profile
KATIE SE7EN
ロサンゼルス、パナマ、カナダ、スペインなどで海外生活を15年以上経験してきた帰国子女。 カリフォルニア州立大学では犯罪心理学科専攻、民族誌学に重点をおいた人類学を副専攻に卒業し、大学院では脚本を専攻し、イギリスやアメリカの文学作品を読み漁るが中退。女優、モデルとして東京に拠点を移し活動するも、DJとしての才能が開花し、以降KATIE SE7ENとして国内最高峰のクラブをはじめ、イビサでもプレイするDJとなる。 イギリスのレーベルからオリジナル楽曲のリリースもしている実力派であり、イベントのプロデュース、ブランドのパーティやホテルでの選曲なども担う傍ら、最近では豊富な経験を活かした執筆活動を始めるなど、海外視点を知る現代の日本女性として常に自己の革新を続ける。