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【FASHION AS MUSIC】vol.6 “DRIES VAN NOTEN” BARNEYS NEW YORK 中野光章によるファッションコラム
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2019.06.18
こんにちは。久しぶりのコラムです。
突然ですが、ベルギーのブランド<ドリス ヴァン ノッテン(以下ドリス)>はお好きですか?
私は大好きです。
毎シーズン必ず買うヘビーなファンではないですが、コレクションを見るといつもわくわくして、バーニーズ ニューヨークの店頭に入荷して実物を確認すると更に洗練された素材使いやプリントの美しさに感心しています。
私はXLサイズのわがままボディなので、カットソーやシャツ、ニットなど軽いアイテムを買うことが多いですが、過去には大物としてライトグレーが美しいノースリーブの(!)民族調のムートンコートを購入したことがあります。そのムートンはデザインが素晴らしく、コレクションではニットとあわせていて一目惚れでした。普通のムートンと違いメンズで袖がないので着こなしには工夫が必要でした。自宅であれこれと50回は袖を通したのですが、実は外には数回しか着ていません。でも自分にとっては特別な一着で毎年必ずコーディネートを試していて、未だに大切にしています。
ドリスの静かな生活の中から生み出されるクリエイションは唯一無二のもので、他のデザイナーにはない気品と少しの色気を感じます。
昨年公開されたデザイナー自身にフォーカスした映画「ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男」ともバーニーズ ニューヨークはタイアップをして、ウィンドウディスプレイを実施。一昨年のクリスマスシーズンには公開に先駆けて顧客向けにベルギー大使館での特別試写会も行いました。
私のチーム(セールスプロモーション)のH君は、バーニーズスタッフNO.1の<ドリス ヴァン ノッテン>ファンで、その着こなしにいつも刺激を受けています。彼のコーディネートを見ていると、ドリスのシーズンレスな魅力を強く感じます。
実際ただシンプルで上質なだけでないそのコレクションは、シーズンを横断した着こなしが楽しめて、ドリスというブランドの普遍性を感じます。
はっきり言って、前シーズンのものが古臭くならないのです。
それどころか、新作とあわせることでいままで気づかなかった魅力が表れたりします。
メゾンブランドはそのロゴ=意匠が顔となり、革小物やバッグなどで楽しむ方が多いと思います。実際洋服はシーズン物、消耗品と捉えてお金をかけず、靴やバッグに豪華なブランドを購入して自己投資する女性はとても多いと感じています。
それ自体は悪いことではなく、パワーのあるブランドは昨今のロゴブームで(多少落ち着きましたが)その魅力を幅広い年齢層に訴えていると思います。
毎シーズン新たなロゴデザインでファンの購買意欲を刺激するブランドもあり、その柔軟な姿勢は現代のファッションの主流になっていて多くのフォロワーを生んでいます。
そんな潮流に対して、ドリスのデザインの特徴はそのロゴで勝負しないことです。
デザインでブランドを表現し続けているから、タグを外してもドリスだとわかります。
ファブリックに施されたテキスタイル、特にボタニカルや様々な柄、贅沢な手仕事による刺繍などが魅力でありブランドを表す顔となっています。仮に別のブランドが真似すると「ドリスっぽいね」という一言でバッサリと切られて、ファッション好きへ共通理解を与えてしまうほどです。
そんなブランドが今季はヴェルナー パントン氏のモチーフを大胆に使ったコレクションを展開しています。
パントンはバーナー パントンだと思っていたら、最近はヴェルナーと表記するようですね。時代は変わります。パントンチェアで有名なパントン(故人)は1926年デンマーク生まれのデザイナー。ヤコブセンから独立してミッドセンチュリーデザインに大きな影響を与えた巨匠です。生前恐らく最後となる彼の作品は、FPM田中知之さんの1998年の名作アルバム「LUXURY」のジャケットなのは有名な話です。
私ももちろん持っています。
ドリスが生み出したシャツの素材使いやその大胆なグラフィック。素材や形ごとに開襟シャツやTシャツなど細かく工場(+原産国)も変えているのは彼のこだわりからでしょう。パントンの家族の許可を得て、パントンデザインの配色やバランスを変えてドリスのプロタクトに落とし込むなんてたまりません。
これからどんどん暑い季節となりますが、こんな素敵な1枚を纏ってぜひ夏を謳歌いただきたいと思います。
こちらは<カルバン クライン>のユニフォーム・パナマコート。バーニーズ ニューヨーク横浜店で見つけて、こんなふざけた(失礼!)アイテムを発売したデザイナー、ラフ・シモンズが愛おしくなりました。
そしてそれをちゃんと買い付けたバーニーズのバイヤーも手前味噌ですがナイスです。
表から見ると完全にアメリカの大学で卒業式に着るあのコートです。
帽子を天に投げたくなりました。
残念ながらコレクションへの参加は今回でラスト、ラフ自身も先んじて退任となりましたが、彼のデザインした<カルバン クライン>はこの先何年かしたら超お宝になりそうな気配がぷんぷんするので、グッときたやつは頑張って買いたいなと思っています。
ファッションは流行でありスタイルでもある。
だから止められませんね。
Profile
中野光章
バーニーズ ニューヨーク セールスプロモーション チーフマネージャー
大学卒業後、バーニーズ ジャパン入社。新宿店デザイナーズフロアのマネージャーを経て、2003年よりPRマネージャーとして活動、現在に至る。インディアンジュエリーとヴィンテージウェアに特に造詣が深く、ファッション誌の企画構成も手掛けている。座右の銘は「倒れる時は前のめり」と「インディアンジュエリーは出逢った時が最安値」。
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