【MY LETTERS】vol.4 カリグラフィーアーティスト miyuyimによるコラム
COLUMN ART
2019.12.19
カリグラフィーで使用する文字数は基本的にアルファベットの26文字(大文字と小文字で52文字)と数字と&?!などの記号くらい。
日本語と比べ物にならないくらい練習する文字数が圧倒的に少ないです。
アルファベットをA to Zの順番で毎回毎回書いていると飽きてくるときもあります。
そんな時にちょっとした気分転換をするために…♪
Pangram パングラム
を用いて練習します。
パングラムとは、
アルファベットの26文字を全て使用して作られた文章のことで、同じ文字が入っても良いが、文章が短いほど良いとされます。
1番よく知られている文章が、
パングラムを用いて練習することによって、文字のつなぎ方やバランスを取る練習にもなるので、様々なパングラムで練習しています。
が、しかし、このパングラムは単なる文章になっていれば良いので、意味不明な文章が多々ある。
上記の文章を訳すと、
「素早い茶色の狐は怠けた犬たちを飛び越える」
文章にはなっているけど、ことわざか何かなのか。調べたけどやっぱり単なる言葉遊びで深い意味はなさそうだw ウサギとカメの話を置き換えたくらいの想像にまでにしかたどり着かないw
犬と狐…眷属かなーとか?
これも日本人の発想じゃないと出てこないですねw ついつい意味を持たせたくなります。
「ブルークォーツに交換した織物シルクパジャマ」
これも特に意味はなく、ただただアルファベット26文字全部入ってる文章。うーん、物足りない。
そこで、日本語のパングラムといえば、すぐに思いつくのはひらがな48文字全て一度しか使用していない完全パングラムという秀逸なこの詩。
色は匂へど・・・香りや美しい色の花も
散りぬるを・・・やがては散ってしまう
我が世誰ぞ・・・この世で誰が
常ならむ ・・・不変でいられるのか
有為の奥山・・・無常の現世という深い山を
今日超えて・・・今日も越えれば
浅き夢見し・・・儚い夢をみることも
酔いもせず・・・現世に酔いしれることもない
『いろは歌』はただの文章ではなく、まず歌なんですよね。“今様”といって五七調四句の構造でもあり、日本語の持つ意味のすごさ、リズム感、ここまで解釈できる考え方を持つ日本人の想像力に脱帽してしまいましたw 誰が作った歌なのかは不明で、意味を知れば知るほど天から降りてきた歌としか思えなくなってきます。笑
いろは歌がこんなにも奥深すぎるものだとは思っていませんでした。。。学校で習っていたとしても深すぎて意味がわかってなかったですね。パングラムに興味を持った日本人が調べていくと必ずこの『いろは歌』に辿り着くはずw 大人になって改めて意味を知ると本当におもしろいです。
「アルファベット26文字」:「ひらがな48文字 」
なので、ひらがなの方が文字数が多いから表現できる幅は広いというのはあるにせよ、ここまで奥深く意味を持たせて表現できる日本人はやはり独特の世界観を持ち、良い意味で曖昧に遠回しに美しく表現する方法を自然と共に感じてきた証なのかもしれない。
書くからにはやっぱり意味があるものを書いていたい、と思ってしまう私はカリグラフィーから『いろは歌』にたどり着いたことで、日本人としての心を持てていると思えてちょっと嬉しくなりました。
英語だけでなく世界の言語でパングラムは作られていて、(読めないけどタイ語やアラビア語でもあるみたいです。)すべての文字を入れて文章を作るという言葉遊びは世界共通なんだと思うととてもピースだし、ほかの言語のパングラムを調べては楽しんで練習しています。
(中国語だけは全て漢字なので完全パングラムは無理に等しいそう。確かに。)
●Profile
miyuyim ミユ
R&B、Reggae、Drum’n’Bass のシンガーとしてメジャーレーベルやインディーズで数々の楽曲をリリースしクラブミュージックシーンで活動する傍ら、ファッション業界で様々な職種を経験。現在はカリグラフィーを軸に、ロゴ、ペーパーアイテム(ウェディング、バースデー、DM、インビテーションなどのパーティー関連)、メニュー、ショップウィンドウ、自身の作品などの制作や文字提供を行う。トラディショナルなフォントに80’s & 90’sカルチャーやUKミュージックから影響を受けた独自のセンスを文字に加えるスタイルで様々なフォントを手書きできるよう、日々、自分の文字への追求という書の道を歩んでいる。