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【Yesterday Is History, Tomorrow Is a Mystery】vol.02 トラックメーカー・Mori Zentaroによるコラム

COLUMN MUSIC

2020.05.05

 

 

 – 自分のカルチャー・ショック体験から考える、「文化」の重要性 –

 

 

やはり、どうしても時節柄を受けた話題になってしまうのですが、今回のコロナによる混乱が始まって間もなく、行政のトップ達があっさりと文化関連の人々を見切るような振る舞いをしたこと、以降も、多くの人々から、ライブハウスをはじめ、そういった文化全般が仮想敵のような扱いを受けたこと、挙句の果ての、首相自らによる、非常に理解し難い、例の動画の一件などの一連の出来事に、僕は大きなショックと、強い憤りの念を覚えました。

 

現代の日本において、一般的には、文化や芸術が、衣食住と分かち難いような深いレベルでは、求められていないこと、自分が思っているほどには、大衆はそういうものを必要としていないことは、以前から分かってはいました。

 

(あくまで一般的には、という話で、そうじゃない人がたくさんいることも、もちろん分かっています。)

 

けど、こうも強烈かつ明確な形でその実態を見せつけられると、さすがに落ち込でしまいました。

 

今感じているこの悔しさを、僕は死ぬまで忘れず、一つの原動力としていきたいと思っています。

 

 

それで、僕がそのように感じる背景には何があるのかをお伝えしたく、また、自己分析したい気持ちもあり、僕がこれまでの人生で、とても重要な出来事だったと感じている「文化的なもの」との出会い、そこから受けた影響などを、今一度振り返り、考えてみたいと思います。

 

少々長くなりますが、お付き合い頂けたらと思います。

 

 

僕はこれまで、所謂「カルチャー・ショック」と呼ばれるような、それまでの自分の価値観や、世界観に大きく揺さぶりをかけられるような、人やモノとの出会いを、数多く経験してきました。

 

それらの経験は、自分の人生を、とても豊かなものにしてくれていると感じています。

 

その中でも最たるもので、かつ決定的だったのは、中学1年生の時(2年生だったかも)の、The Clashというバンドとの出会いです。

 

 

The Clashは、所謂「パンク・ロック」の代表的なバンドで、ロンドンで結成され、1970年代中盤から1980年代にかけて活動し、後の音楽シーンに広範かつ、多大な影響を与えた存在です。

 

The Clash / 左からPaul Simonon (Ba),Topper Headon (Dr),Joe Strummer (Gt,Vo),Mick Jones(Gt,Vo)

 

The Clashを知る直前の僕は、もう音楽にどっぷりではあったんですが、その頃はEric ClaptonやLed Zappelinなど、王道かつ、そのときにはすでに神格化されきっていたようなアーティストを中心に聴き漁っていました。

 

振り返るとその頃、自分が音楽をやる側の人間になるという発想は、不思議なほど全く思い浮かばず、「音楽は選ばれた特別な人間がやるもの」といったような感覚を漠然と抱いていました。

 

当時聴いていたアーティスト達には、そう思わせるような、なんというか、崇高で神秘的な雰囲気があったように思います。

(音楽を取り巻くメディアが今ほど発達しておらず、情報が少なかったことも、そのように感じさせる一因だったと思います。)

 

ともあれ、そんなこんなで、ラジオや雑誌を頼りに、日々色んな音楽を探っていく中で、「パンク・ロック」なるジャンルがあることを知り、興味を持ちました。

 

その月のお小遣いを貰うと、早速CDショップへ赴き、雑誌で推薦されていたThe Clashの1stアルバム「The Clash」(邦題 / 白い暴動)を手に取り、喜び勇んで帰路につきました。

 

The Clashの1stAlbum「The Clash」(邦題 / 白い暴動)ジャケット・アートワーク

 

 

そしてそのCDをコンポに挿入してからの約30分間のことを、僕は絶対に忘れません。

 

文字通りに、人生が一変した30分間でした。

 

「!!!!!!?????????」

 

その時感じたことを書き起こすなら、こんな感じが一番適切なような気がします。

 

まるで、突然雷にでも打たれたかのように、何が起こったか分からなかったんです。

 

荒い音質、ぶっきらぼうな感じで、取り立てて上手いとは思えない演奏、力任せに叫んでいるだけのようなボーカル、ほとんど3分未満でアッサリと終わってしまう楽曲。

 

さらに音楽だけではなく、こちらを睨みつけるようなメンバーの姿を写した、モノクロのジャケット写真や、バンド名を綴ったフォント、それらの行間からどうしようもなく匂いたつ、感じたことのない異質な雰囲気。

 

何もかもが、それまで触れてきたものと、少しも似ていませんでした。

 

そして、それらが全存在をかけて、自分に何かを強く訴えかけているような感じがしました。

 

アルバムは35分くらいしかないので、一周目は本当にわけが分からず、何だったんだと思いながらまたすぐに再生して、「あ、なんか曲がかっこいいのかも」と思い、けどまたすぐ終わってしまって三周目、今度は和訳された歌詞を読みながら、、、、

 

そうして何度も何度も繰り返し聴いて、歌詞や、ライナーノーツに記された、バンドの簡単な経歴などを読んで、徐々に情報を把握し始め、気が付くと、感動というべきか、衝撃というべきか、容易くは形容し難いほど、強く胸を打たれている自分がいました。

 

それまで親しんでいた音楽やアーティストは、貴族のような衣装を着た端正なルックスの人達が、高度な演奏技術を駆使して、やれ「天国への階段」やら、やれ「クリムゾン・キングの宮殿」やらよく分からん世界を提示する、言ってしまえば大仰なものがほとんどでした。(それも大好きなんですが。)

 

対するThe Clashは、「仕事にウンザリだ」とか「ロンドンは退屈で死にそう」とか「権力は金持ちに握られている」などといった、中学生にでも「これは身近な現実のことを歌っているんだ」とすぐに分かるようなトピックを、勢い任せのような荒々しい演奏に乗せて、吠えるように、噛みつくように歌っていました。

 

この人達はなんだか自分の地元にもいる、ちょっと怖い、けどかっこいい先輩みたいだな、というような印象を抱きました。

 

それから雑誌などで、特集やインタビューを読み漁ったり、わざわざドキュメンタリー・ビデオを取り寄せて観たりするうちに、その印象はどんどん強まって、

 

「あれ、なんだミュージシャンって普通の人間だったんだ」というような気付きを得るに至りました。

 

そこから更に踏み込んで、「じゃあ自分でもなにか出来るんじゃないか」と思うようになるまでには、さほど時間はかかりませんでした。

 

それまで、音楽を作るという行為やアーティストの存在を、「自分とは違う世界の出来事」だと感じていた価値観、世界観が破壊され、「自分にも出来るかもしれない、なれるかもしれない」という全く新たなアイデアが、自分の中に芽生いたわけです。

 

これが僕が経験した、人生最大にして、最高の「カルチャー・ショック」です。

 

それから僕はギターを手に取り、曲を作り、思春期のほとんど全ての時間をバンドに捧げ、その勢いのまま今に至るわけです。

 

勢いのままと書きましたが、紆余曲折あり、一筋縄ではいかない道のりでした。(今もその道中ですが。)

 

大変な生き方を選んでしまったと思うことも多々ありますが、音楽や文化的なものに心を救われ続けているという感覚の方が、圧倒的に強いです。

 

あの時、The Clashと出会っていなかったら、今とは全然違った生き方をして、そのことになんの疑いも持たなかったかもしれないし、それはそれで幸せだったかもしれません。

 

けどやはり、僕はThe Clashと出会い、ちゃんと自分の目でモノを見て、感じたことを大事にして、考えるということを学んだおかげで、今現在、人生を、とても意義のあるものだと感じています。

 

文化的な何かを愛していたり、それに属している人たちには何かしら、こういう経験があるのではないしょうか。

 

それを知らない人は可哀想だとか思っているわけでも、みんなこうなれば良いみたいな、安い押し売りをしたいわけでも、誰かを否定したいわけでもありません。

 

ただ、70年代のロンドンの若者達が奏でた音楽が、それから30年近く経ってなお、日本の片田舎の少年の人生を、これほどパワフルに、あっさりと変えてしまい、彼を良い方向へ導いたと考えると、音楽や文化には、計り知れない、途轍もない力があると思わずにはいられないんです。

 

書いていてふと思い当たりましたが、僕はそんなカルチャーに、未だ何も恩返しできていないことを、歯痒く感じているのかもしれません。

 

長くなってしまいましたが、結論として僕は、自分のこういった経験から、「文化」を非常に重要なものと考えています。

 

けどこのままでは、それが後の世代に受け継がれず、死に絶えてしまうんじゃないかという危機感を抱いています。

 

こういう問題提起を多くの人に促していることや、社会の諸問題を可視化したという点は、コロナの良い作用として、挙げるべきだと思います。

 

色々なことの意義が根幹から揺らぎ、再構築することを求められている今、僕は改めて、自分が大事にしてきたものを守るために、考え、行動していきたいと思っています。

 

お読み頂きありがとうございました。

 

 

 

 

 

●Profile

 

 

Mori Zentaro

 

2013年頃よりトラックメイカーとして活動を開始。 以降様々なアーティストへのトラック、楽曲提供を行う。 ミュージシャン、フォトグラファー、ペインター等が集う アーティストコレクティブ「Soulflex」に所属。 Soul,R&B,Hiphop,Jazz,Funk,Electronica,Alternative Rock など、あらゆるジャンルから影響を受けた多彩な音楽性を特色とし、2017年に行われた国内最大級のトラックメイク、 ビートメイク、作曲の大会「beat grand prix vol.02」では ファイナリストに選出された。

近年ではSIRUPの他、「香取慎吾」「山本彩」「向井太一」など数多くのアーティストからの楽曲オファーが殺到。現在最も注目されるトラックメーカー・プロデューサーの1人。

 

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