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【Yesterday Is History, Tomorrow Is a Mystery】vol.10 トラックメーカー・Mori Zentaroによるコラム

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2020.08.25

 

映画感想文 vol.02 / 「ライフ・アクアティック」

 

近年では「グランド・ブタペスト・ホテル」や「犬ヶ島」などが好評を博したウェス・アンダーソン監督の2004年の作品「ライフ・アクアティック」は、上記の2作品ほどの知名度はないかもしれませんが、大海原を舞台に展開される冒険活劇的なストーリーと人間模様、オフビートな笑いや、随所に満遍なく散りばめられたオタク的ギミックなどがとても魅力的な愛すべき映画です。

 

 

ー海洋学者で、自身の探検をドキュメンタリー作品として発表する映像作家でもあるスティーヴ・ズィスーはここしばらく作品が当たらず、資金繰りにも苦労するなど、齢50過ぎにして困難な時期を迎えていた。

そんな状況に追い討ちをかけるように、長年のパートナーを巨大未確認生物に喰い殺されてしまう。

スティーヴはその生物を追うために、突然現れた自分の息子と名乗る青年や、妊婦の雑誌記者、保険会社の調査員などを巻き込んで「人生最後の航海」に乗り出すー

 

以上が大まかなストーリーです。

 

この冒険心をくすぐられる筋書きそのものも、そこで描かれる人間模様もとても好きなんですが、僕がこの映画の大きな魅力だと感じるのが、全編に渡ってウェス・アンダーソン監督のオタク的趣向が思い切り披露されている点です

 

実在の海洋学者ジャック・イヴ・クストーをモデルにした主人公とその仲間たちの衣装や装備、ストップ・モーション・アニメで描かれたファンタジックなデザインの架空の海洋生物たち、ブラジルの人気アーティストで俳優のセウ・ジョルジが劇中でギターを手にポルトガル語で弾き語るデヴィッド・ボウイの楽曲群など、ディテールに感じられるこだわりやアイデアの数々が大変面白く、この作品ならではの個性を大きく担っていると感じます。

 

この点をどう捉えるかで、大きく評価の別れる作品かもしれません。

 

それに加え、ナルシストで高慢で漢くさい、けど人を惹き付けてしまうスティーヴ、その息子かもしれない好青年ネッド、スティーヴに心酔するベテラン乗組員クラウス、スティーヴを密着取材する記者ジェーンをはじめ登場人物もそれぞれにクセが強いキャラクターが多く、際どいジョークや脱力した会話など、ユーモアのセンスも独特です。

 

 

(スティーヴと仲間達)

 

つまりかなりピンポイントなストライクゾーンを攻めてくる作風ではあると思います。

 

けれど、年老いた主人公の苦悩や、ぎこちないながらも徐々に絆を深めていく「家族」の様子など、根底にはとても普遍的なテーマがある作品だと思います。

 

ユーモアたっぷりに描かれていますが、クライマックスから終盤にかけての展開にはしみじみとさせらるものがあり、人生の悲哀と喜びが胸に染み渡るような余韻を残してくれます。

 

主人公のスティーヴ役のビル・マーレイの無愛想だけど、飄々としてどこか憎めないような佇まいは作品の雰囲気にとてもフィットしているように思います。

 

ウェス・アンダーソン作品常連のオーウェン・ウィルソンやアンジェリカ・ヒューストンをはじめ、ウィレム・デフォー、ケイト・ブランシェットなど脇を固める俳優陣もとても素敵です。

 

個人的に大好きなシーンも多く、物語のキーとなる「ジャガー・ザメ」の登場する場面はとても美しいし、他のクリーチャー達の登場シーンも、子供が想像に任せて書いた絵がそのまま動き出したような楽しさがあります。

 

実物大の断面セットで撮影されたスティーヴの船「ベラフォンテ号」の紹介シーンも、少年少女向けの雑誌や図鑑によくある「ロボット図解」や「基地見取図」的なものを本気で再現したような遊び心に溢れていて、そこだけ何度もリピートしたくなるくらい好きなシーンです。

 

(ベラフォンテ号の実物大断面セット)

 

先述のセウ・ジョルジによるデヴィッド・ボウイ楽曲のカバーも発想とセンスが素晴らしいですし、海賊との交戦シーンでかかるThe Stooges / Search & Destroy、クライマックスでのSigur Rós / Starálfurなどの選曲の妙、Devoのマーク・マザーズボーによるスコアなどの音楽的な演出も見事です。

 

広範に渡る影響源がユニークな手法で咀嚼、再構築された小宇宙的映像世界と、悲喜交交としたヒューマン・ドラマが実に味わい深く、僕にとっては忘れ難い映画です。

 

 

 

 

 

 

 

 

●Profile

 

 

Mori Zentaro

 

2013年頃よりトラックメイカーとして活動を開始。 以降様々なアーティストへのトラック、楽曲提供を行う。 ミュージシャン、フォトグラファー、ペインター等が集う アーティストコレクティブ「Soulflex」に所属。 Soul,R&B,Hiphop,Jazz,Funk,Electronica,Alternative Rock など、あらゆるジャンルから影響を受けた多彩な音楽性を特色とし、2017年に行われた国内最大級のトラックメイク、 ビートメイク、作曲の大会「beat grand prix vol.02」では ファイナリストに選出された。

近年ではSIRUPの他、「香取慎吾」「山本彩」「向井太一」など数多くのアーティストからの楽曲オファーが殺到。現在最も注目されるトラックメーカー・プロデューサーの1人。

 

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