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【Yesterday Is History, Tomorrow Is a Mystery】vol.13 トラックメーカー・Mori Zentaroによるコラム

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2020.10.06

 

諸星大二郎の魅力

 

 

好きな漫画家は?と聞かれたら食い気味で「諸星大二郎」と答えます。

それくらい別格に好きな作家です。

 

僕が初めて読んだのは「彼方より」という短編集でした。

その一冊をとっても、SF、怪異譚、ホラー、伝奇、コメディなど作品によって題材にかなり幅があるのに、そのどれもが非常に強い説得力と奥深さを持っていて、その魅力に一瞬で虜になってしまいました。

 

なかでも「カオカオ様が通る」という一編はその強烈なビジュアルも相まって、特に魅了されました。

 

 

 

諸星作品には、不可解で不気味なものや、不安な気持ちを掻き立てられるようなものが多いですが、同時に何故だか懐かしいような、居心地の良いような気分にもさせられます。

そんな上手く言語化出来ないような不思議な感覚に満ち満ちた諸星ワールドが僕は大好きです。

 

 

諸星作品の魅力の一つとして、先述したように作風の幅広さがあります。

 

木星の衛星イオから帰還した宇宙船が引き起こす怪現象を描いたSF短編「生物都市」、

日本各地の民間伝承や神話を調査する考古学者が主人公の怪異譚シリーズ「妖怪ハンター」、

紀元前の中国~インド~日本を舞台にした伝奇ものの「孔子暗黒伝」、架空の街「胃の頭町」を舞台にしたコメディ調の「栞と紙魚子」などなど、そのバラエティの豊かさにはただただ舌を巻くばかりです。

 

伝奇や歴史を題材に取った作品では、豊富な知識量と解析力に裏打ちされた強靭な世界観や想像力の豊かさに、尋常ならざる凄みを感じますが、コメディタッチの強い作品では、とことんナンセンスだったりチャーミングだったりして、そのギャップに初めて読んだ時はかなり驚きました。

 

また、僕がとても魅力的だなと思うのが絵のタッチです。

写実的ではなく、歪んだような線が多いんですが、この世界観にはこの絵しかないと感じるようなタッチで、これも諸星作品の特異性を形成する重要な要素だと思います。

 

諸星作品には、「妖怪」「神様」「異世界」などのモチーフや、怪現象などが多く登場し、なかには明確なオチのない話などもあります。

 

ちゃんと言葉に出来ないような、なんだかよく分からないような感覚や世界。

そういうものって近代以前はもっと人間にとって身近なものだったんじゃないかと思いますし、僕自身、子供の頃にはそういったものをもっと日常的に感じていたように思います。

 

だから僕は諸星作品に、怖さや不気味さと同時に、懐かしさや安らぎのようなものも感じるのかもしれません。

 

 

ご本人も「理屈が嫌い」と、あるインタビューで語られていましたが、確かな考証などを踏まえながらも決して理詰めにならない、閃きを感じさせるような表現が本当に素晴らしいと思います。

 

こういった諸星ワールドに感化された作家はとても多く、宮崎駿、庵野秀明などのいくつかの作品では明らかな影響を見てとることができます。(「もののけ姫」「崖の上のポニョ」「新世紀エヴァンゲリオン」etc…)

さらには手塚治虫も生前、自身の名前が冠された賞を、先にも書いた初期の短編「生物都市」に授与し、称賛しています。

手塚治虫は負けず嫌いで新人にも嫉妬を剥き出しにしていたことで有名ですが、諸星さんに対してはほぼ手放しで褒め称えるような発言を残しています。)

 

 

諸星作品を読んでいると、意味がよくわかるものや、明るくても暗くても、いずれにせよはっきりしているものばかりが世の中の全てではないんだなと思わされます。

もっと、言葉に出来なかったり、しなくてよかったり、よくわからないままでいいものがあるんだという、おおらかな気持ちになります。

(ものを作る人間の端くれとしては、歴史考証や、多角的な情報収集の重要性にも気付かされますが。)

 

多作な方で、なおかつ70歳を過ぎられた現在も盛んに執筆されているので、まだ読めていない作品も多く、引き続きじっくりと諸星ワールドを探究していきたいと思っております。

 

 

 

●Profile

 

 

Mori Zentaro

 

2013年頃よりトラックメイカーとして活動を開始。 以降様々なアーティストへのトラック、楽曲提供を行う。 ミュージシャン、フォトグラファー、ペインター等が集う アーティストコレクティブ「Soulflex」に所属。 Soul,R&B,Hiphop,Jazz,Funk,Electronica,Alternative Rock など、あらゆるジャンルから影響を受けた多彩な音楽性を特色とし、2017年に行われた国内最大級のトラックメイク、 ビートメイク、作曲の大会「beat grand prix vol.02」では ファイナリストに選出された。

近年ではSIRUPの他、「香取慎吾」「山本彩」「向井太一」など数多くのアーティストからの楽曲オファーが殺到。現在最も注目されるトラックメーカー・プロデューサーの1人。

 

Mori Zentaro:

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Soulflex:

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