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【Yesterday Is History, Tomorrow Is a Mystery】vol.16 トラックメーカー・Mori Zentaroによるコラム

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2020.11.17

 

図書室便り その2

 

 

「垂直の記憶」 / 山野井泰史

 

世界的なクライマー、登山家の山野井泰史さんの登攀記。

 

 

僕が山野井さんの存在を知ったきっかけは、とあるドキュメンタリー番組でした。

 

その番組で山野井さんが、ゾッとするような高く切り立った岩壁を命綱もせず、公園で散歩しているみたいな軽装で軽々と登りながら、「このほうが家にいるよりずっと落ち着く」と涼しげな表情で言う場面がありました。

 

その光景があまりにも衝撃的で忘れられず手に取ったのが「垂直の記憶」でした。

 

山野井さんがこれまでに行った七つのクライミングの記録をご本人が綴った内容で、実際のクライミングの描写が事細かに描かれていて、経験のない自分にも、その場のピンと張り詰めたような緊張や、高峰の環境の厳しさなどが、当事者の手記ならではの迫力を持って伝わってきます。

 

加えて、なぜ自分がクライミングの道に入ったのかなどの過去の回想や、奥さんで同じくクライマーの妙子さんとの日常の様子なども綴られていて、山野井さんの人となりも感じられます。

 

植村直己や星野道夫の著作を読む時にも感じることなんですが、自然と深く関わり合って、生死を身近に、強く感じている人の文章はなんというか、どこか静かな感じがすると思います。

 

夢にどうしようもなく突き動かされるような狂気的な情熱が芯にありながら、同時に全部を冷静に俯瞰しているような、諦観めいたものが漂っているように感じます。

 

危険の少ない穏やかな環境よりも、次の瞬間にはあっけなく死んでしまうかもしれないような状況を追い求めやまない山野井さんの生き様を思うと、人が本当に「生きる」ってどういうことなんだろうと思います。

 

これまでに何度も生死の境を彷徨うような過酷な状況を潜り抜け、体にも多くのダメージを残しながらも、今もご自身たちのペースでクライミングを追い求める山野井さんご夫妻の姿には、とても容易には真似出来ないと分かりながらも、強い憧れを感じます。

 

「垂直の記憶」はそんな、一つの道に生きる人間の清々しさと凄みに鮮烈な感動を覚える一冊です。

 

 

●Profile

 

 

Mori Zentaro

 

2013年頃よりトラックメイカーとして活動を開始。 以降様々なアーティストへのトラック、楽曲提供を行う。 ミュージシャン、フォトグラファー、ペインター等が集う アーティストコレクティブ「Soulflex」に所属。 Soul,R&B,Hiphop,Jazz,Funk,Electronica,Alternative Rock など、あらゆるジャンルから影響を受けた多彩な音楽性を特色とし、2017年に行われた国内最大級のトラックメイク、 ビートメイク、作曲の大会「beat grand prix vol.02」では ファイナリストに選出された。

近年ではSIRUPの他、「香取慎吾」「山本彩」「向井太一」など数多くのアーティストからの楽曲オファーが殺到。現在最も注目されるトラックメーカー・プロデューサーの1人。

 

Mori Zentaro:

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Soulflex:

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