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ストリートカルチャーから生まれた、刺繍だからこそ表現できる”モノの価値” 刺繍カンパニー『シシュウブギウギ』
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2021.03.22
洋服や家具などを買う時に、みなさんは何を重視して選ぶだろうか。
機能性が充実していれば最低限事足りる中で、デザイン性を重視する人もたくさんいるだろう。
今回 Suppage PRESS では『刺繍』を使って人をワクワクさせてくれるブランド・シシュウブギウギに注目。
ブランドオーナーである河瀬 努氏へのインタビューを行った。
– まずはブランドが立ち上がるまでの道のりをお聞かせください。
僕は元々デザインの仕事を行っていました。商業デザインとして広告を作ったりしていた傍ら、アパレルのグラッフィックや音楽アーティストのジャケット・フライヤーなどのデザインも手がけていました。
その延長線上で趣味的な要素も含めて絵を描いたりもしていました。もともと絵は好きなのですが、どこかピンと来るものがありませんでした。
– ピンと来なかった?
そうなんです。そんな中「自分は何が一番好きなんだろう?」と客観視してみたところ、キャラクターやロゴを作ることが特に好きなんだなというところに行き着いたんです。
ただ作るだけではなく、それを何かに落とし込めたらいいなと考えるようになりました。
併せて「自分で何か新しいことを始めたい」という思いも持っていました。
そんな時期に刺繍屋さんで働いていた妻に自分が作ったデザインデータを渡して刺繍で表現してもらったところ、自分の中に衝撃が走ったんです。
基本的にフラットなデザインを取り扱うことが多かった僕にとって、立体感の出る刺繍を使ったデザインに新鮮味を覚えました。「これをやっていこう!」と、即決でした。(笑)
– そこでブランドの立ち上げを決めたのですね。
刺繍機の購入など下準備に今から3年ほど前から取り掛かり、約1年半ほど前の2019年8月にこのブランドを立ち上げました。
アトリエ
今回インタビューに応じてくださった河瀬 努氏(中央)と
シシュウブギウギ 大福社長(右)
– 実際に刺繍を依頼する際のオーダー方法も数パターン用意されているんですよね?
お客様がデザインから決めていく場合は、フルカムタムオーダーとセミカスタムオーダーの2パターンを用意しています。
– セミカスタムオーダーはブランドからデザインの提案を受けられるとのことですが、フルカスタムオーダーはデザイン入稿の知識がないとなかなかハードルが高いですよね…。
いえいえ、とても簡単です。イラストレーターやフォトショップなどのデザインソフトで作成したデータはもちろんですが、ペンを使って手書きで描いたデザインを送ってもらうところからスタートできます。それを写メで送ってもらってもOKです。そのデータをもとにディスカッションする中で糸の色など細かい部分を決めていきます。
– そんなに簡単なのですね!驚きです。
どなたでも簡単に好きなデザインを刺繍にすることができます!
(三井製パンCafe&Garden)
(1n58)
カスタムオーダー参考例
どなたでも簡単に希望のデザインを刺繍で表現できる
-『シシュウブギウギ』というキャッチーなブランド名も魅力の一つかと感じています。由来を教えていただきたいです。
このブランドを立ち上げることが決まってから、「ブランド名は何にしよう?」という会話を妻と四六時中していました。全然良い名前が出てこなかったのですが、わかりやすく『刺繍』という言葉は入れようと考えていました。悩みすぎてどんどん案が脱線したりしながら時間が過ぎていったんですが、ある日、自分と妻2人同時に「ブギウギじゃない!」って言い合ってびっくりしました。
おそらくスチャダラパー好きということが大きく影響していると思うのですが。(笑)
カタカナのブランド名にしたかったということもあり『シシュウブギウギ』に決めました。
– そんなストーリーがあったのですね。抜け感もありとても素敵な名前だと思います!
かっこつけ過ぎず多くの方に馴染んでいけそうな名前だなと、今ではとても愛着を持っています。
– 河瀬さんがデザインされた三角形のロゴも、とても収まりがよく思います。
三角のロゴにしようと最初から決めていました。ロゴとブランド名が一体化しているデザインにしたかったんです。
昨年末に渋谷パルコで POP UP ストアを実施したのですが、そこに合わせて三角形のロゴのこのライトボックスも作成しました。色々と立て込んでしまい POP UP ストアに間に合わせることはできませんでしたが…。
額縁などを作っているブランド・NOTEWORKSと縁があり製作を依頼したところ、快く引き受けてくださいました。
– ワンポイントで入ってるオレンジも、これまた楽しい気持ちになりますね。
◯◯ブルーならぬ、ブギウギオレンジという名前にしましょう(笑)
ライトボックス
– ブランドのインスタグラムなどにも掲載されている『ブギウギ商店街』など、とてもユニークなワードがたくさんありますよね。
『ブギウギ商店街』はシシュウブギウギが作った架空の商店街です。これを作った時がちょうどコロナが大流行し始めたときでした。なかなか外にでかけられない状況で、「自分で街を作るならどんな街がいいかな?」という思いから生まれました。自分が通いたくなるような架空のお店のロゴを作っています。
先ほどお話しした POP UP ストアで、試作的に架空の6店舗を用意してその説明文章を添えて展開しました。
ブギウギ商店街に軒を連ねるお店たち
そのほかにも数々のユニークなオリジナル商品が取り揃えられている
– 『まぐれ飯店』、私も行ってみたいです。(笑) もっとたくさんのお店が賑わってくれることを期待しています!
これと並行して POP UP ストアでは、フォロワーの方から募集したワードをワッペンにするという企画も展開されていましたよね。
全部で60~70件ほど応募をいただきました。そこから5名の方にプレゼントさせていただきました。応募の締め切りに間に合わない方がいらっしゃったのですが、その方が挙げた
『チョベリバ』というワードはとてもおもしろかったです。(笑)
-『チョベリバ』は久々に聞くワードですね。(笑)
すべてカタカナですし、シシュウブギウギにもハマるワードだなと思っただけに僕としても非常に惜しかったです。
こんな風にワッペンに落とし込むと、死語と呼ばれるものやどうでもいいワードにも価値が出てくる気がして作っていても嬉しい気持ちになりますね。
ワードワッペン
– ブランドの質感や見せ方など、ストリート感が含まれていて随所にセンスが光っているなと感じます。カルチャーに精通されているからこそ生み出せるものなんだろうなという印象を受けます。
もともと音楽が好きでレコードを買ったり、DJをしたりして音楽と触れ合ってきました。Hip Hopやレゲエに触れてきた経験がルーツとなっていると思います。
アパレルの仕事をしていたとき、アメリカ西海岸など海外アーティストを日本に呼んでイベントやパーティーをやっていた時期もあります。
背景として音楽を感じてもらえたり、ブランドと音楽がナチュラルにリンクしていったらいいなと思っています。
– そんな環境を経験したからこそ、手がけられているブランドからもストリート感が滲み出ているのだなと感じました。
インタビューの最後として、シシュウブギウギの今後の展望をお聞かせください。
しっかり商品を見たり手に取っていただける場所を作っていきたいので、今後は店舗を構えようと考えています。場所と目処が立てば、今年~来年のうちに実現したいです。
普段生活していく上で必要なものってなんだろうと考えた時に、刺繍は完全に付加価値でしかないなと思っています。人によっては必要とされないこともあるだろうなと。
ただ、逆にそれがあることによって生活に彩りを添えてくれるひとつのツールにもなれると考えています。
付加価値といってもデザインや商品自体の良さを感じてもらうのはもちろんですが、シシュウブギウギの雰囲気だったり「シシュウブギウギの人たちは面白いことをやってるな」というところまで感じ取ってもらえるような発信をしていきたいです。
感じ取ってもらった上で、お客様ご自身の楽しさに変換してもらえたら嬉しいです。
●BRAND Profile
シシュウブギウギ
シシュウブギウギは、ユニークでエッジの効いたテイストを心がけ、お客様が刺繍の楽しさを実感できるサービスを行う刺繍カンパニー。”今を楽しむ”をモットーに、日常のふとした一瞬に出てしまうフレーズや、愛嬌たっぷりのキャラクターたちを、刺繍に特化して表現しています。POPでユニークな世界観のオリジナルアイテムをリリースしながら、100%自分好みの刺繍を作れるフルカスタムオーダーや、選んで作れるセミカスタムオーダーなど、刺繍を通して毎日をワクワクする活動を行っています。
シシュウブギウギ 大福社長