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「発酵の文脈から生まれた、自然と健康の循環」株式会社越後薬草

INTERVIEW PROFESSIONAL

2021.12.17

 

変化に富んだ地形と四季折々の美しい自然が豊かな新潟県・上越市。

夏は高温多湿、冬は低温多湿という発酵に適した気候と風土に恵まれた地域であるため、清酒や味噌をはじめ野菜類や魚介類の漬物、どぶろくやワインなど、数多くの発酵食品による発酵文化が盛んなまちだ。

そんな新潟の地で、酵素の製造過程の中で誕生した「体にいいスピリッツ」が製造・販売されていることはご存知だろうか?

 

今回のSuppage PRESSでは、野草を中心に80種類の原材料が使用されているスピリッツ「YASO SPIRITS」の製造・販売を行う株式会社越後薬草へインタビューを敢行。

 

コーポレートマークでもあるヨモギの葉が紡ぐ現在までの軌跡、そして、酵素の製造から辿り着いた株式会社越後薬草ならではのお酒と健康、更には自然と環境への思いを代表取締役の塚田氏へ伺った。

 

 

YASO SPIRITS

 


代表取締役 塚田 和志 氏

 

– 御社の事業について、ご紹介をお願い致します。

 

弊社は創業から45年目になりますが、メインとなる事業は健康食品やサプリメントの製造でこの事業が全体の9割以上を占めています。

また、健康食品とは異なりますが、会社全体的には「発酵」をテーマに事業を展開しているのでキムチの製造・販売事業も行っていて、昨年からはアルコールのジンやスピリッツを製造する酒類事業も始まりました。現在はこれら3つの事業を展開しています。

 

 

– 御社は1976年の創業以来、ヨモギを中心とした野草類を発酵させて造る健康酵素商品のメーカーとして様々な事業を展開されていますが、どういった経緯で会社が立ち上がったのでしょうか?

 

元々は畜産からスタートした会社になります。

新潟県上越市はお灸が有名な地域で、そのお灸に使われるヨモギの産地として、上越市は国内シェア全体の9割を担っています。お灸の原料となるヨモギは葉の裏側に白く光る綿毛を持っており、その綿毛を乾燥させ、臼でくだき、葉や茎を取り去るという作業をくり返し続けると、フカフカの綿毛だけが残ってお灸に使うもぐさになります。その当時、弊社が行う事業のなかでヨモギの葉の表側の部分は副産物として出ていました。そこに目をつけた先代が、ヨモギの葉の表側の部分に付加価値をつけたいという発想から、葉を発酵させ、豚や牛等に食べさせました。すると、非常に食いつきがよく、肉質もより良いものになりました。このことをきっかけにヨモギの効能は人間の体にもいい効果をもたらすのではとひらめき、人間でも手軽に摂取できるようヨモギを主体とした発酵飲料の研究・製造へと動き出します。そこから、野草を中心に80種類の原材料を煮出したエキスに酵母菌、麹菌、乳酸菌を入れて発酵・熟成させた商品として「野草酵素萬葉」が誕生し、今では主力商品となりました。

 

 

– ヨモギは御社のコーポレートマークにもなっていますね。

 

そうですね。

ヨモギは弊社が製造・販売を行う全ての食品に原材料として入っていて、会社のシンボルです。

 

 

ヨモギ

 

– 元々副産物だったヨモギの葉の表側の部分に着目したことで、酵素の製造に繋がったとは驚きです。

 

そして、この「酵素」を造る工程は、後に酒類事業をスタートさせるきっかけとなりました。

先程お話したとおり、酵素を造る過程の中でアルコールが発生するのですが、当時はそのアルコールをまた鍋に戻して揮発させ、ノンアルコールになったエキスを酵素として販売していました。そんな中、工程を加速する装置として導入したのが蒸留器でした。この蒸留器の導入がきっかけで、お酒を作り出すことができました。

弊社が製造・販売を行う「YASO」は、お酒をつくる目的、お酒を飲んで気持ちよく酔うことが目的のお酒というよりかは、健康食品・サプリメントを作る過程に生まれたアルコールを利用して造った、ヘルシーでボタニカルアロマを感じるお酒です。

 

 

– 副産物であったヨモギの葉が酵素を製造するきっかけとなり、またその酵素を製造する過程で生まれるアルコールがスピリッツとジン造りへ繋がっていったとは驚きでした。

キムチの製造・販売の事業を開始したきっかけはどういったものだったのでしょうか?

 

キムチの製造・販売の事業は、『一般のユーザーさんも購入できるような、もう少しライトな商品を「発酵」という文脈のなかから新たに作り出せないか』と、僕が初めて立ち上げた事業になります。

健康食品・サプリメントは体に良いものではあるものの、生活をする上である程度豊かで暮らしに余裕のある人が健康に興味を持ち、お金を使うので、どちらかというと富裕層向けの商品です。スーパーで手軽に購入できてカジュアルでライトな、弊社が製造する全てのものは本物志向であることが伝わるわかりやすいものがあればと思ったときに、発酵食品であるキムチがいいのではと思い、キムチの製造・販売をスタートさせました。

 

 

– 「発酵」という文脈から酵素、お酒、キムチと繋がっていかれたのですね。

会社の拠点として新潟の地を選ばれた理由はあるのでしょうか?

 

地元だったから、ですね。(笑)

会社を経営する上で人それぞれ考え方や大義名分があると思うのですが、『最終的なゴールはなんだろう?』と考えたときに、僕は将来的に社会・地域貢献をしたいという思いに辿り着きました。

その中で、最大の地域貢献は地元の雇用と考えています。地元で会社が大きくなれば、様々な意味で土地が豊かになるので、地元という意味で先代は新潟の地を拠点として選んだのだと思います。

 

 

代表取締役 塚田 和志 氏

 

YASO SPIRITS

 

 

– 先程の事業のご紹介の中で、酒類事業をスタートするきっかけは酵素の製造過程で生まれるアルコールがきっかけであったとお話しいただきましたが、「YASO」ブランド始動の経緯はどういったものだったのでしょうか?

 

酵素の製造過程の中で蒸留器を導入した本来の目的はアルコールを造り出すためではなく、アルコールの揮発をよりスムーズに・時間短縮をするためだったので、その当時は弊社が酒類事業の販売・製造を今後行うとは考えてもいませんでした。

しかし、蒸留することで生まれたスピリッツをあるタイミングで試しに飲んでみたところ飲めることに気づき、販売へと切り替わって行きました。スピリッツの製造・販売は、このような偶然の産物により生まれたものでした。

 

 

– 「YASO SPIRITS」は商品名の通り野草を中心に80種類の原材料が使用されていますが、原材料はどのように選定されたのでしょうか?

 

先代が選定したのですが、この80種類の原材料はどれも主原料となるものばかりです。
野草は昔から民間療法の代表として私たちの生活に関わってきました。それらを複合的に合わせてトータル的に一物全体というところで、全てを体に取り入れるという考えから80種類になりました。

 

 

– なるほど。

「YASO GIN」ですと更に増えて、130種類のボタニカルを使用されていますよね。日本で一番ボタニカルを使用しているクラフトジンではないでしょうか。

 

恐らく、使用しているボタニカルの数は世界で一番多いですね。

 

ウコン

 

ドクダミ

 

ハスの葉

 

高麗人参

 

– 「YASO SPIRITS」の製造を進めていく中で、苦悩などはありましたか?

 

実は、商品の企画自体がネガティブスタートでした。

酵素の製造過程の時短のために導入した蒸留器からできたお酒を販売するといざなったときに、当時はスピリッツの免許の取得方法やお酒の販売方法がわかりませんでした。取り急ぎ、酒税法の観点から税理士の方をお呼びして工場内を確認いただいたところ、そもそもヨモギを発酵させる段階でお酒を製造していることになるため、急いでスピリッツの免許を取得しないと通常の営業もままならないことが発覚しました。それからスピリッツの免許の取得へと急ぐことになるのですが、同時期に先代が急遽亡くなり、僕が代を引き継ぐことになります。代表として、組織である会社の調整を行うと同時に酒類の製造・販売事業の立ち上げを行わなければならず、当時はネガティブスタートと思っていましたね。お酒を製造するにあたり色々と紆余曲折がありました。

また、実は僕自身、お酒に全く興味がありませんでした。

お酒はハイボールしか飲んだことがなく、今でも角ハイボールが最強だと思ってるくらいです。(笑)

 

– では何故、スピリッツ、そしてジンの製造へと進んでいったのでしょうか?

 

僕は「名探偵コナン」のアニメが好きなのですが、「黒の組織」という悪の組織がお酒のコードネームで呼ばれていて、その中で一番強かったのが「ジン」というキャラクターでした。それが理由で、スピリッツの免許取得に動くとなったときにジン、ウォッカ、ラム、テキーラの4大スピリッツのなかでジンを選びました。世間のジンブームがあったからジンを選んだのではなく、これがジン造りのきっかけの本当のストーリーになりますね。ブランディングチームからも「ブランドのイメージに影響するから言わないでくれ」と言われているのですが、色々な媒体さんでも既に話しているので今回も話してしまいました。(笑)

それからジンをつくることになり、勉強しながら製造を進めていきましたね。

 

– 「名探偵コナン」がきっかけでジン造りがスタートしたとは驚きです。(笑)

 

そうですよね。(笑)

今まではOEMやPBで他のメーカーさんからの委託を受けて商品を製造していたのですが、「YASO」に関しては製造から販売まで、そしてブランディングからマーケティングまでを全て自社で行い、お客様の声を社内に流れよく取り入れて、商品開発に上手く繋げていこうという思いの中で立ち上げた事業になるので、自社ブランドとしては新たな挑戦でした。

 

 

YASO SPIRITSとYASO GIN

 

 

– 「YASO SPIRITS」のボトルデザインに込めた想いはありますか?

 

ボトルに複数の線が入っていると思うのですが、これは原材料80種類にちなんで80本の線を使ったデザインになっています。

原材料全て一つ一つが欠けることなく主原料であると思っているので、1本も欠けることなく全て溶け込んだ液体、それが「YASO」であるという思いが込められたボトルデザインに仕上がりました。

 

 

– 例年、「YASO GIN」は限定生産で販売をされていますよね。
なかなか手に入らないという特別感や希少価値の高さに購買意欲を掻き立てられます。

 

余るような商品はつくりたくないですし、やはり人気か不人気かでいえば人気商品をつくりたいという思いはあります。

「手にした人が特別感を味わえる・豊かになるようなものを」というブランドコンセプトがあるので、商品を手にすることで特別感を得られたりだとか、特別な時間を味わえたりだとか、そういった豊かな楽しみ方をしていただけると嬉しいですね。

 

 

– 御社が長年培ってきた野草の知識から生まれた「YASO」ですが、具体的なターゲット層はあるのでしょうか?

 

「YASO」のターゲットは20代後半から40代前半です。30代が中心の女性というところに絞っていますね。

まず、ジンはエチケットやジャケットがおしゃれということ、そしてワインやウイスキー等のように液体に色が入っておらず無色透明であること、植物を多用する香りのあるお酒であること、最後に、ジンで使うワードが「ハーブ」「ボタニカル」「アロマ」「オーガニック」等の女性が好きなものが多かったというこの四点が、ターゲット層の選定の決め手となりました。ただお酒を飲んで、酔うためのものというよりかは、シーンやモノを感じながら味わうお酒として楽しんでほしいです。

 

 

YASO GIN

 

 

– 「自然環境に配慮したサイクルを実現する蒸留所の建設」を目指して、昨年の20年10月からクラウドファンディングに挑戦されるとの記事を以前より拝見していました。
どういったきっかけで建設をめざすことになったのでしょうか?

 

「YASO」は独特な世界観だと思っています。

僕は蒸留とアートは紙一重だと思っていて、僕ら人間が制御できない部分が自然にあるなかで、その自然の文脈を「YASO」というスペースで体感してもらいたい、「YASO」の世界観をお客様に知ってもらいたいという思いがありました。

ただ製造工場があるのではなく、美術館のようなスペースの中でつくられる、アートにごくごく近いお酒が「YASO」であること、植物との共存というコンセプトのもとよりアートな・芸術性の高いお酒をそのスペースで表現し、みなさんが来てくれれば「YASO」の世界観をより伝えられるのではないかと思ったのが、蒸留所の建設をめざすきっかけでした。

 

– なるほど。様々な蒸留所がある中で、味覚や嗅覚だけではなく、視覚そして感性で楽しめる美術館のような蒸留所は斬新ですね。

 

アートとして「YASO」を表現をしたいという思いがある一方で、会社として様々な自然物を取り扱っている中で、ゴミの排出をしたくないという思いもありました。

原材料として様々な植物を使いますが、全てがお酒に溶け込むかというと、そうではありません。植物から香りや味を出したあとは、ぼろぼろになった植物が出てしまいます。その蒸留後に出る植物をゴミとして排出するのではなく、畑の農家さんたちと組んで使い終わった植物を土へ還し、土ごと発酵させて、その土で原材料の植物たちを新たに育ててもらい、その植物を弊社で買い取るという、リサイクルというフェーズではなく「自然環境に配慮したサイクル」を作る予定です。地球規模の視点で考えたときにその循環を作り出すことが本当のエコであると会社として考えているので、そういった意味でも「サイクルをつくる蒸留所」を目指していますね。

 

 

YASO SPIRITS

 

 

– 「YASO」として、今後目指しているものはありますか。
 今後の展開について、可能な範囲でお教えいただけますと幸いです。

 

会社としては、日本古来の「発酵」という文脈の中で様々な商品の製造・販売を行っていますし、上越の良質なヨモギを主原料に商品を製造する先でやはりお客様の健康そして豊かなライフスタイルをよりサポートできるような企業になっていくということが、中期的、そして長期的でもある会社としての目標ですね。

「YASO」としては、コロナ禍に生まれた商品になるので、オフラインのイベントには未だ出たことが無いのですが、SNSを通じてお客様との距離をできるだけ近く持つブランドになっていきたいですし、ご要望として届いた声を商品にどんどん反映させていきたいですね。お客様との距離感を大事にして、お客様のニーズにも応えられるものづくりの企業として、「YASO」に反映していきたいと考えています。

 

-最後に、Suppage PRESSの読者へメッセージをお願いいたします。

 

原材料の野草はとっかかりにくく、美味しくない印象を持たれている方が多いかと思います。しかし、自然というものは皆さん好きですよね。「YASO」を通じて、その自然物は生命力に満ちていて、その自然物が体に浸透していくということを体感いただきたいです。そして、自然と植物の可能性、豊かさををぜひ感じてください。

 

 

 

 

●Company Profile

株式会社越後薬草

昭和51年に新潟県糸魚川市筒石で創業し、昭和55年に上越市小猿屋に社屋を移転。ヨモギを主として野草類の力と独自の発酵技術を活用した健康食品を開発・製造販売する。代表商品は、80種類の原料を約1年発酵・熟成させてつくる「野草酵素萬葉」など。

 

株式会社越後薬草 公式WEB SITE

YASO 公式WEB SITE