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新進気鋭のブランドが築いたメンズコスメの新たなポジション。見据える先は”性別の向こう側” コスメブランド『BOTCHAN』
INTERVIEW PROFESSIONAL
2020.12.11
“メンズコスメ”と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるであろうか。「爽快感」「男性の身体ならではの悩みを打ち消す術」というようなことを思い浮かべる方が大半かと思います。
今回Suppage PRESSが注目したメンズコスメブランド『BOTCHAN』は、”繊細男子”なる新たなジャンルをターゲット層とし、デザインから商品自体の実力に至るまで、今までにない全く新しいメンズコスメを世に発信している。
2016年に誕生し、進化を続けるBOTCHANを製造販売する(株)アンド・コスメ 加登愛子氏、ブランディングコンサルに携わるスタビンズ(同)福岡氏にお話を伺った。
右 :(株)アンド・コスメ 加登氏
左:スタビンズ(同)福岡氏
– まずはお二方の自己紹介をお願いします。
加登:BOTCHANを製造販売しております、(株)アンド・コスメの加登です。弊社は私の兄(代表)・私を含む計3名のスタッフが在籍しております。
福岡:BOTCHANのブランディングコンサルを行っています、スタビンズ(同)の福岡です。外資系ブランドのマネジメントなど長い間化粧品業界に携わってきており、6年前に独立して加登さんと出会い、お仕事をご一緒しています。
– ブランド立ち上げのきっかけを教えてください。
加登:(株)アンド・コスメ 代表である私の兄・加登隆太は、かねてより霊園のプロデュース/運営業を行なっております。団塊の世代が少なくなってくるにつれ墓地の需要も減ってくるというところで、兄はなにか新しい事業を始めたいと考えておりました。そんな時に、元々知り合いであった地元・大阪の化粧品の原料会社の方のお話を聞いているうちに化粧品を作ることに興味を持ちました。
ちょうど私が海外から日本へ拠点を移したタイミングでしたので、2016年に新会社として(株)アンド・コスメを兄と共に立ち上げました。
その頃は、今ほどメンズコスメというもの自体が世間に浸透していなかったということもあり、メンズに特化したブランドを展開していくことに決めました。
– 新たな事業の立ち上げということで、最初は苦労も多かったのではないでしょうか?
加登:OEMの方とはパイプがありました。デザイン周りに関しては、デザイナーの方がたくさん載っている本を兄と二人でチェックし、その中で飯高健人さんにぜひお願いしたいと私が強く思ったので、我々自ら飛び入りでお声掛けさせていただきました。ブランドコンセプトを伝えさせていただくと、飯高さんは快く引き受けてくださいました。
飯高健人氏デザインの商品パッケージ
– 商品のパッケージなどを見ても、色とりどりかつアーティスティックなデザインに目を奪われてしまいます。
加登:「メンズコスメのイメージカラーは白か黒」というステレオタイプの概念がありますよね。ブランドを始めた当初は我々も化粧品業界のセオリーがわからない状態でしたので、逆にそれが功を奏し、思いのままの表現をデザインに落とし込めたのだと思います。
福岡:実際に女性の化粧品のマーケットは2兆7千億ほどありますが、男性のマーケットはその5%以下です。海外ブランドの香水を例にとっても、「for MEN」となるとムスクが入っているなど男らしい商品が多いんです。それを使いきれない日本人の男性はたくさん居て、巷に出回っている男性用のブランド以外にしっくりくるものがないか探している方はたくさん居ると思っていたんです。
私もそのゾーンを追求しかけていたんですが、そんな中共通の知り合いを通じて加登さんたちと出会い、「すごいなこの人たち」と第一印象で感じました。ぶっ飛んでるな、と。(笑)
– 「なにかを良い感覚を掴んで事業を始められたんだな」という印象を受けられたんですね。
福岡:メンズコスメのマーケットが大きくなりそうな予感は私も感じていました。そんな中加登さんからデザインされているボトルを見せてもらい、興奮してしまいました。
そこからターゲットをはっきりさせようということで、「メンズ」というカテゴリーから「繊細男子」というカテゴリーへ絞り込んでいったのです。
-「繊細男子」ですか。新たなワードですね。
福岡:性別をグラデーションで現すと、「女性に近いところに居そうな男性」という意味です。”女性の香水を着こなせそうな方”をターゲットにしています。また、グラデーション上で性別の壁に近い部分にいるボーイッシュな女性も使用できるような商品を目指しました。自分の性に疑問を持っているLGBTQの方に対してもマーケットを広げたのです。
立ち上げ当初の段階でブランドコンセプトを煮詰めていく際に、LGBTQの当事者の方達の意見も取り入れながら進めていました。やはり本当の声を聞きたいなと思いまして。
最初は「ユニセックス」や「ジェンダーレス」というカテゴリーで進めようとしていましたが、そうするとニュートラルな感じになってしまう。
ブランドコンセプトである「LOOK BEYOND」という言葉の通り”性別の向こうを見ている”という立ち位置、すなわち性別の壁なんてないんだよという立ち位置を守るよう心がけました。
ここに注目するブランドは今までなく、面白いなと感じていました。立ち上げて2年半ほど経ちましたが、購入者の50%が女性というデータに現れているかと思います。
– 実際に販売を始めた時の購入者のリアクションはどのようなものでしたか?
福岡:PRを始めた中で、男性たちが興味を示してくれた一方で、女性の美容家やハイラグジュアリーな女性誌のエディターの方々は「こんな可愛いメンズコスメは”ずるい”」「私たちも使えそうだ」という反応を記事に書いてくださいました。おかげで女性にも浸透していきました。
パッケージを見ただけではメンズコスメとはわからない方がほとんどで、手にとってみると「for MEN」と書いていてそこでようやく気づく。そういう面白さもありました。
商品を並べたら虹色になるデザインは、多様性をサポートしていくという意味を込めてデザイナーの飯高さんと作り上げました。
加登:今までのメンズ商品の”さっぱり”というものではなく、”しっとり”と保湿したいという男性に向けて作ったので、女性にも響いたというところが女性の購入者50%というところに繋がっているのかなと思います。
あとは「ロゴが読めない」という反応もありました。(笑)
– これだけ可愛いデザインのボトルであり、並べると虹色の設計。コンセプトもしっかり反映されているんですね。
福岡:メンズですと洗顔フォームと化粧水の2品で充分という方が多いかと思いますが、洗面所に並べたいという理由から乳液まで購入される方が多くいらっしゃいます。
– 並べたい・揃えたいという気持ち、すごくわかります。
福岡:ボトルで気分が上がる女性は多くいらっしゃると思いましが、男性にも同じことが言えるのではと考えました。並んでいると朝気持ちよく洗顔ができるかなと。それも仕掛けのひとつです。
洗顔という毎日のルーティーンが楽しく、遊んでいるような感覚になるようという思いのもと、デザイナーの飯高さん遊び心が詰まっています。ストリートの要素も取り入れながら。
ボトル単位でデザインを変えるのはコストがかかりどのブランドも避けることが多いですが、そこはアンド・コスメさんの企業努力の賜物かなと思います。
すべて揃えて、「BOTCHAN」を
完成させたくなる商品ビジュアル
– 先ほどもお話に上がった「BOTCHAN」というブランドネーム、非常に特徴的ですよね。
福岡:名前の通り、夏目漱石の「坊っちゃん」に被せたコンセプトになっています。ストーリーを読んでいくと坊ちゃんの主人公も美意識の高い繊細男子なんですよね。
先ほど加登さんもおっしゃっていたように、読みづらいですよね。(笑) でもこのロゴをとっかかりとしてBOTCHANのことを調べていくと、男性用だけど男らしい方向ではないということがわかります。すごく良い名前だなと思っています。
BOTCHAN ロゴ
– 最初に抱く疑問が、全て良い方へ転じて行っていますよね。
さて、昨今は新型コロナウィルスが流行しています。その中での生まれたお客様の反応などあればお聞かせ願います。
福岡:店頭はやはりダメージを受けました。しかし自粛期間が始まった頃からECサイトの売り上げがグーンと伸びました。それ以前までのトータルの売り上げを凌ぐほどです。
STAY HOMEにより自分に向き合う時間が長くなりましたよね。洗顔やお風呂、普段何気なく行なっていた行為をBOTCHANを使ってより楽しく遊んでもらう感覚を購入者に持っていただけたんじゃないかと思います。
加登:リモートワークが主流となり、テレビ会議が増えたことで自分の顔と向き合う男性がたくさん増えました。普段はそこまで鏡と向き合わない男性が、自らの顔をケアする大切さに気づき意識が上がったんだと思います。
福岡:実際に、自粛期間あたりから100社ほどメンズコスメブランドが立ち上がっています。
店頭販売の様子
– ギフトとしての需要も多いようですね。
福岡:女性から男性に贈る、カップル同士で家で一緒に使用するなど様々な贈り方をされる方がいらっしゃるようです。
それに付随して、ギフト用商品にもこだわっています。一般的には化粧品ポーチなどが多いかと思うのですが、もっと遊び心を持たせようと思いました。
ネクタイ専門店のgiraffeとのコラボでBOTCHAN柄の蝶ネクタイを作りました。本物の西陣織で作っており、制作段階でどうしても端切れが出てしまうので、それを利用してポーチも作りました。
それからAnapauというパンツメーカーとコラボし、BOTCHANの落書きを施したような「RAKUGAKI パンツ」という男性用下着も作成しました。
他にも全国の銭湯巻き込んだ「ヒトップロセット」など様々ございます。
相性の良いブランドとコラボすることを大事にしています。
giraffe × BOTCHAN 蝶ネクタイとポーチ
Anapau × BOTCHAN「RAKUGAKI パンツ」
「ヒトップロセット」
その他、バラエティに富んだ様々な
コラボ商品・ギフト商品をリリースしている
– 2020年ウィンターホリデーギフトとして、線香花火とのコラボも実施されていましたね。
加登:こちらは福岡の老舗・筒井時正玩具花火製造所とのコラボです。今年のクリスマスはこのご時世もありキラキラしたものになりそうにないなということで、二人で過ごす時間を贈るのにふさわしいコラボ商品を作成しました。
家で花火を楽しめない方もいらっしゃると思うので、デジタルで楽しめる線香花火も作成しました。スマホに線香花火の映像を映し出しながら、スマホを上からつまむように持つと実際に線香花火をやっているように感じられるコンテンツです。
– 全てのコンテンツに思いや意味合いが込められていて、本当に素晴らしいです…。
最後に、今後ブランドとしてどのような方々へリーチしていきたいですか?
福岡:「性別の壁を壊していく」という思いがあるので、どなたが使用されてもいいと考えています。
男性用・女性用という概念に囚われず自分が良いと思ったものを使うべき。そこに気づいて欲しいです。
今後新商品を展開していきますが、「for MEN」のあとに「?」がついててもいいかなと。そんな風にブランドが変わっていくのもありかなと思います。
加登:スキンパーフェクターという商品がありまして、女性用でいう化粧下地の役割なのですが、こちらは色がつかない無色のものです。肌のテカリと毛穴とケアしてくれる商品なのですが、塗っていることが他人にはわからないようになっています。
男性用のファンデーションやコンシーラーは他ブランドからリリースされていますが、BOTCHANとしてはそこに踏み入りたくはない。あくまでも自然に、自分をきれいにできるような商品のラインを守っていきたいです。自然な仕上がりで自分の気分も上がる商品を探すならBOTCHAN、となるように今後の商品展開を行なっていきたいです。
「綺麗にしたいけど、バレたくはない」というギリギリのラインのニーズに応えていきたいと思います。
福岡:BOTCHANを使えば「モテる」ではなく「自分磨きをしっかりできる」という解釈であってほしいです。自分の顔で生きていくことの背中を押す、そんなポジションでありたいです。
●Interviewee Profile
加登愛子 KATO AIKO
株式会社アンド・コスメ 専務取締役
ニューヨーク州、パーソンズ・スクール・オブ・デザインにてファッションマーケティング科を修了した後、ニューヨークを拠点とするファッションブランドでマーケティングを担当。ニューヨークの他、カリフォルニア、ハワイでの生活を経て、兄である加登隆太と共に株式会社アンド・コスメを設立。海外生活で得た経験を生かし、枠に捉われないユニークな発想でBOTCHANを創案。
福岡 英一 Eiichi Fukuoka
スタビンズ合同会社 CEO
(1986-2013年)
SCジョンソン株式会社
Parfums GIVENCHY 株式会社元代表取締役社長
KENZO Parfumes 元日本支社代表
Parfumes Givenchy Japan 代表締役社長
LVMH(ルイヴィトンモエヘネシー)フレグランスブランズ株式会社元代表取締役社長
パルファムジバンシイ、KENZOパルファム。プッチ、フェンディの化粧品・香水事業の25年従事。
百貨店を中心に52店舗の組織を率いる。
1986年より一貫して化粧品事業に従事
事業戦略、マーケティング、営業、メディア、PR、マネージメント、ブランディングに精通。
(2014-2020年)
CELLMER JAPAN 元取締役就任
THE BOOK株式会社元代表取締役
2017年4月 STUBBINS合同会社設立 CEO(現任)
●Company Profile
株式会社アンド・コスメ
株式会社アンド・コスメは、メンズコスメブランドBOTCHANの立ち上げにあたり、
従来のメンズコスメの概念を超えた、より柔軟で軽やかな存在を目指し、LOOK BEYOND.
「男らしく」、を脱け出そう。をブランドスローガンとして商品開発を進めてきました。
メンズコスメ市場は、拡大傾向にありますが、爽やかさ、制汗、テカリ防止など、
まだまだ画一的な機能性とイメージのラインナップが多く見られます。
そんな既存のメンズコスメでは物足りないと感じている、次のスキンケアのあり方を求めている男性に。また、ジェンダーに捉われず、機能性とイメージを大切にして、自分にあったモノを選びたいという方々に。
LOOK BEYOND.「枠にとらわれることなく、その先を想い描く」そんな思いを企業の姿勢や取り組みを通して、きちんと届けていきたいと考えています。
すべての人が、ありのままに生きられる社会づくりに向けて。
みなさまからのご意見やアドバイスと共に、一歩ずつ前進し、活動の場を広げてまいります。
●Information
・BOTCHAN× 筒井時正玩具花火製造所 ウィンターホリデーギフト「冬のHANABI」
2020年11月16日(月)から冬の線香花火をリアルとバーチャルで体験できる、ウィンターホリデーギフトの販売がスタート。「冬のHANABI」は伝統の光を守り続ける、筒井時正玩具花火製造所株式会社とのコラボレーション。ウィンターホリデーギフトはBOTCHANのスキンケアアイテムを自由にセットすることができる。
野外で楽しめる線香花火「BOTCHAN 冬のHANABI」だけではなく、インドアでも楽しめる「オンライン線香花火」も注目のコンテンツだ。リアルな線香花火の感覚を体験できるように、火玉の落ち方が異なる3パターンの動画をBOTCHANオンラインストアにて配信。冬の澄んだ空気と線香花火の光のコントラストを楽しもう。
オンライン線香花火はこちらから
・BOTCHAN ×「夏と彗星」 初のタイアップソング「カミングアウト」をデジタル配信
フロントに異端のポップソングライター・夏代孝明を据えた音楽プロジェクト「夏と彗星」がBOTCHANと初のコラボレーション。ウィンターホリデーギフトにあわせたタイアッップソング「カミングアウト」をデジタル配信リリース。自分の感性にフィットする生き方を模索するグラデーション世代におすすめの楽曲になっている。
楽曲視聴はこちらから